よもやま人 vol.2 伊藤 航(いとう わたる)



プロフィール

山形県高畠町生まれ。大学在学中に東日本大震災を経験し、災害ボランティアセンターの代表を務めたのち、子どもや大人に幅広く自然学習プログラムを運営するNPOに参画。趣味は、登山やキャンプなど自然の中で過ごしたり、写真を撮ること。料理が得意。


秋、紅葉真っ盛りの栗駒山にて、趣味の登山を楽しむ


どうして丸森町へ?



―早速ですが、航さんはヨモヤマカンパニーで何をしているんですか?

主に「地域交流拠点まどい」(以下、まどい)の運営を担当しています。

まどいでは飲食の提供だけでなく、地域コーディネーターとして地域の人の悩みや困りごとを聞いたり、人をつないだりもしています。でも実は、コーディネーターとしてもっと地域に出ていきたいし、会いに行きたい人がいっぱいいるんですよね。

まどいの他には、住民が町のことを話し合う「丸森まるまる円卓会議」や地域の課題と高校生のやりたいことを実行するプロジェクト「高校生マイプロジャーニー」などの企画・運営にも関わっています。

―丸森町に関わるきっかけは何だったのでしょうか?


台風19号の災害支援をきっかけに丸森町に初めて訪れ、その時にヨモヤマカンパニーのメンバーにも出会いました。

その後、前職を辞めることが決まり、転職先を探していた時期に、災害支援の時に出会ったヨモヤマカンパニー代表の眞由さんと再会し、飲食店をやりたいという思いを話しました。そしたら「丸森で(飲食店)はじめたよ。うちで働かない?」って。眞由さんは、この地域が本当に好きなんだなと感じていましたし、話にもすごく共感していました。だから、この地域でならやれるなと思い、働こうと決めました。

今は、丸森町への想いを持って活動している人たちと一緒に、この町で自分のやりたいことをやりたいと思います。丸森町に想いをもって住む人たちがいるから、この地域にいたいと思っているんですよね。


丸森町や周辺地域で活動する仲間たち


災害支援の現場から自然体験の現場へ


―ヨモヤマカンパニーで働くまでは、どんな活動をしていたんですか?


大学4年生に上がる直前に東日本大震災が起き、当時在学していた福島大学が避難所になったことがきっかけで避難所運営のボランティアを始めました。その後、災害ボランティアに特化した「(学生団体)福島大学災害ボランティアセンター」(以下、災ボラ)を立ち上げて代表に就任。それから5年ほどは福島での災害支援活動の第一線にいましたね。


避難所でのボランティアの様子 大学卒業後、一般企業への就職を経て、大学院に進学し、地域福祉や災害ボランティアのマネジメントを研究する傍ら、引き続き災害支援活動に参加していました。

ある時、たまたま誘われて参加した学生向けの「自然体験活動リーダー養成講座」がきっかけで、 自然体験の活動にハマり、大学院時代の3年間、活動に参画することになりました。活動を主催していたNPO法人で、「今度は自分が自然のことを伝える立場になりたい」と思い、インタープリター(自然案内人)として働くことを決断しました。具体的には、子どもキャンプや登山ツアーなどの主催事業、企業や行政との協働プロジェクトの企画・運営、ガイド養成スキルアップ講座などの仕事を担い、3年半勤務させてもらいました。

自分も、みんなも、やりたいことができる環境をつくる


―そのNPOから転職を考えた理由は何ですか?


災ボラでの活動を通して出会った方が、震災前は福島県の浪江町で居酒屋をやっていたんです。話を聞くうちに、地域の中でお店を開くことの意味、やりがい、楽しさを感じるようになり、将来は飲食店をやりたいという思いが生まれ、それがずっと心の中にありました。上司に相談したところ背中を押され、当時30代に入っていたこともあり、ここで舵を切るべきじゃないかと思い転職を決意しました。


―当時、なぜ元居酒屋の店主の方の言葉が響いたと思いますか?


しゃべってるその人が一番楽しそうだったんですよね。

地域に明かりを灯し続けることは、小さいようでとても大きいこと。小さな町にそんな場所があるからこそ、離れていても年に1回は地元に帰りたいと思う人がいたり、ここに行けば顔の見える誰かにに会えるという場所があるのは嬉しい。そんな場所をつくっているということに、とても誇りを持っていて、店主の生き様がかっこいいと思ったし、自分もそうありたいと思いました。

―よもやまカンパニーは航さんにとってどんな場所ですか?


多くの試練と困難にぶち当たる場所です(笑)そういう困難にぶち当たった時は、「やるしかないっしょ」「やれるのは自分だけ」というマインドセットになりますね。

―航さんが大切にしているもの(or 価値観)を3つ教えてください。その理由も合わせてお願いします。


1つ目は、実践者であること。見たり聞いたりしただけの知識よりも、自分が実際に体験したことの方が言葉の重みが増すし、説得力が出ると思っています。大変だったことや達成感って、実践したからこそ分かるものだと思うんですよね。そういうことは、何回も何回も繰り返していくことで身に染みていくものですから、一つ一つの実践を大切にしていきたいと思います。


自然学習プログラムを運営するNPOでの自然体験活動の様子。「実践者であること」が大切にされている職場だったそう。


2つ目が仲間。ここで言う仲間は、一緒にやりたいことをやっていたり、同じマインドを持った人ですね。自分は一人じゃ何にもできないと思ってるので、協力してくれる人や、自分を理解してくれる人は大事にしたいです。だから、そういう人たちが傷つけられた時は悲しいし、時には許せないという気持ちになることもあります。

3つ目は、馴れ合いすぎないこと。仲間は大切ですが、仲間だから何でも許されるってわけじゃないと思うんです。何か気になることがあっても、「ま、いっか」と、曖昧にするのはよくない。自分たちを高め合うためには、お互いにきちんと本音を伝え合うことが大事だと思います。

―航さんにとって「生きる」ってどういうことですか?


自分の責任でやりたいことをやること。やったことに対して、自分でしっかりと説明ができて、失敗しようが成功しようが、ちゃんとそれを納得して、人のせいにしないことです。

あと、仕事に関しても趣味に関しても、自分がやっていることに喜びを感じている時に、自分らしく生きている感じがします。

―航さんはどんな未来を思い描いていますか?

Mr.Childrenの「彩り」 という曲が好きで、その歌詞にあるような世界。社会そのものもそうですし、自分の理想の姿でもあります。

「僕のした単純作業が この世界を回り回って どこの誰かも知らない人の笑い声を作ってゆく」という歌詞が、特に好きな部分。知らぬ間に自分のやっていることが誰かの幸せになっているんだなって。こんな生き方をしたら自分は幸せだな、こんな社会なら幸せだなと思いました。

―航さんはヨモヤマカンパニーで、これから何にチャレンジしていきたいですか?


自分のやりたいと思っていることをしながら、地域の人がやりたいと思っていることも、ともに叶えていきたいですね。とにかく楽しいと思えることを、いっぱいしたい。そして、チャレンジできる環境、人が輝ける場をつくりたい。自分のことより、人をサポートする時の方が頑張れちゃう人間なんだと思います。

 まどいも自分のためじゃなくて、来てくれる人が「ご飯おいしい」と言って食べててくれたり、ここで出逢った人同士が仲良くなってくれたり、楽しそうに過ごしてくれたり…そういう場を支えることや、少し離れたところから眺めることが、自分にとっての喜びだなと思います。

―最後に、この記事を読んでくれた人におすすめしたい、この地域ならではのモノ・コトはありますか?


 おいしいものがいっぱいあるところ。ここで言う「おいしいもの」は食材という意味です。丸森町は想いやこだわりを持って作物を育てている生産者さんがとても多いように感じられます。やっぱりそんな人たちが丹精込めてつくったものは本当においしいんですよね。

 まどいでも丸森産食材にこだわったメニューを数多く出しているので、ぜひたくさんの人たちに丸森町の「おいしいもの」を味わってもらいたいです。


―ありがとうございました。

#よもやま人 #丸森町

聞き手・構成・編集:茂出木美樹

ディレクション:鎌田千瑛美