よもやま人 vol.3 信岡 萌美 (のぶおか もえみ)


プロフィール 宮城県角田市の牛農家に生まれる。小さい頃は感受性が豊かな子と言われることが多く、いろいろな人の表情や、自然の感覚を敏感に感じ取るタイプの子どもだった。特技はホームパーティーなどで大勢の料理をつくること。時間が開いた時は子牛のための防寒ベストを縫うことも。2020年には第一子を出産。自分の子どもに限らず、広く命を育む「みんなのお母ちゃん」になるのが夢。

―萌美さんが、眞由さんとともにヨモヤマカンパニーをはじめるに至るまで、どんな活動をして来たんですか?


 眞由さんとの出会いは高校でした。私は中学3年生から学校に通えなくなり、なんとか入学した高校にも、1か月間程度で行けなくなってしまったんです。その後5年くらい引きこもり生活をしてましたね。そんな引きこもり生活の中でも、高校で出会った眞由さんは絶えず連絡をくれていました。遊びの延長で、眞由さんが始めたボランティア活動に誘われたのが今の活動の全てのきっかけです。


 ボランティア活動って、地域の人が無条件に褒めてくれるんですよね。当時の私にはそんなふうに肯定してもらえる経験がちょうどよくて、徐々に外に出られるようになっていきました。そして、眞由さんがつくったボランティアサークルで副代表をやるようになったり、地元の農産物の直売所でバイトをするようになったり…いろんな方に支えていただきながら少しずつ社会へ復帰していきました。

 私の地域活動は、社会復帰の道のりとイコールです(笑)


 当時のボランティアサークルでの活動の様子。


 そうしてボランティア活動を続ける中で、眞由さんと参加したのが「伊達ルネッサンス塾」(以下、伊達ルネ塾)です。「自分のやりたいこと」と、「社会課題」をつなぐ考え方がすばらしいなと感動して、次年度からは運営のほうを少しずつ手伝うようになりました。その時の学びが、ヨモヤマカンパニーの根幹ですね。そして伊達ルネ塾の運営を引き継ぐために2017年に団体を立ち上げました。


―現在、萌美さんはヨモヤマカンパニーで何をしているんですか?


 主に、高校生〜社会人まで、地域に生きる人たちが学べる塾や、セミナーの企画運営を担当しています。


―萌美さんが大切にしているもの(or 価値観)を3つ教えてください。その理由も合わせてお願いします。

 一言でまとめると「命」ですかね(笑)その中の要素として大事にしている3つが、「食」、「自然」、「子ども」かな。


 私は農家の娘に生まれて、直売所に勤めていた経歴もあるので、食や命のことはとても身近でした。一時期は実家でつくった米を食べ、直売所で買った野菜を食べて生活をしていて、家庭での角田市の食糧自給率は80%くらい。私の身体のほぼ全てがその土地のものでできているって尊いなぁと自慢に思っていました。顔が見える人がつくった食べ物を食べること自体が、自分の身体をつくったり、精神をつくる上ですごく健全ですよね。私の中では食べることと生きることは同じなので、みんなで食卓を囲んでいると「生きてる〜!」って感じがします(笑)


 自然については、やっぱり田舎に住んでいて自然との距離感の近さを感じます。私は実家周りの風景がすごく好きなんですが、ここで生きていると、「山の中の一部を切りとって住まわせてもらっているんだ」という感覚があります。そんなふうに、命が生まれて死んでいくあたりまえの自然の中に私がいるという感覚を持ちながら育ってきたから、どうしても今の、人間主体で考えられた社会システムにはモヤモヤすることも沢山あって、そういうのも活動のエネルギーになっているかもしれないですね。


 実家から見える景色。


 子どもに関しては、今は大好きですが、数年前まで自分が子供を産むなんて考えられなかったです。私はずっと引きこもりで鬱だったから、子どもを産んだとしてもちゃんと育てられず不幸の再生産をしちゃうんじゃないかと不安な気持ちがあったんですね。

 そんな時に今の旦那さんが「別に誰の子でもいいんじゃない?僕の夢は孤児院なんだ」と話してくれて。その時は、「そんな発想があるんだ」とびっくりすると同時に、無意識に自分を縛っていたものから救われた感覚になりました。そもそも動物的には子どもを産むことって本能的に一番の喜びのはずなのに、それを喜びだけで捉えられなくなっている社会って変ですよね。

 誰の子どもかルーツに関係なく、子どもを地域全体で育めるようになったらいいなと思っています。だから、私の最終目標は夫婦で孤児院をつくることなんです!


―萌美さんにとってヨモヤマカンパニーはどんな場所ですか?


 考えることを止めずに、共に歩んでいける仲間がいる場所ですかね。

「(地域交流拠点)まどい」っていい名前だなと思うんですよね。みんなで立ち止まって惑ったりしながら、自分の守りたいものを自分で守るための力をつけられるように、互いに高め合っていける社会だといいなぁと思っています。


―ヨモヤマカンパニーで活動している原動力は何ですか?


 究極の目的は、命を育んで幸せに生きていくことです(笑)

 ヨモヤマカンパニーを設立するときに眞由さんと2人で話したのは、「私達が生きていくために必要なものをつくりだす組織にしよう」ということでした。それまでは堅苦しい言葉でビジョンを並べていたんですけど、もっと自分達に正直にいこう、と。



左もえみさん、右まゆさん。それぞれのお子さんと一緒に。(2019年1月撮影)


 利己的に聞こえるかもしれないけど、10~20代の女子がこの地域に生きると決めるのって結構困難だと思うんですよ。足りないものは山ほどある!おしゃれなカフェもほしいし、語れる仲間もほしい。

当事者である私たちが「ここで暮らしたい」と堂々と言えたら、きっと次の世代も残ってくれるんじゃないかなと思って、足りないものは一個一個自分たちの手でつくっていこうと思っています。

 とは言え、単純に土地の比較を始めたらもっとほかの選択肢もあるかもしれない。ただ私は、地域を自分の母親と重ねていて、育んでくれたものに対して、「一緒に生きたい」と言えるのはすごく幸福なことだなとも思ってるんです。なので理想の土地を追い求めて移住するよりは限界までこの土地で頑張ってみたいと思っています(笑)


―どんな未来を思い描いていますか?


 みんなが学びながら、それぞれが大切にしたいことを、自分で守る力を身につけられる社会ですかね。どんな未来がくるにしても、一人ひとりが自分のできることを少しずつ増やしていくことは、すごく大事だなと思っています。


 「行政が悪い」「住民が悪い」「政権が悪い」というように、誰かに不満を言いたくなることもありますが、それだけでは何も変わらないので。確かに現状は、社会に対して一個人ができることの範囲ってすごく少なくて、不平不満を言うしか手立てがないのかもしれません。

 だからこそ、一人一人の手の届く範囲を少しずつ広げていく必要があるんだと思います。そのほうがずっと健全だと思うんです。学生の時だけ学びを強要されるのではなく、生まれてから死ぬまで学び続けられる社会だといいなと思います。


―ヨモヤマカンパニーでこれから何にチャレンジしていきたいですか?


 子どもが生まれて自分自身にも大きな変化があったので、子ども向けの事業もやりたいなと漠然と思っています。田舎はどうしても教育の選択肢が少ないので、小さくても森のようちえんやオルタナティブ教育などに触れる機会をつくれないかなぁと妄想しています。


―最後に、この記事を読んでくれた人におすすめしたい、この地域ならではのモノ・コトはありますか?

 田舎の農家の力強さを紹介したいです(笑)農家さんってもの静かなイメージがあるかもしれませんが、地域や社会のことを深く考えている熱い思いを持った方もたくさんいるんです。

 昔は農業がすべての中心でしたから、農村には今もそうした農家のプライドや精神が息づいています。日々生き物や大地と接している分、地域の未来も地続きに捉えられているんじゃないかと思います。丸森町や角田市でもJICAのプログラムが実施されていたり、国際協力も盛んで、食を基軸に考える農家視点のお話はとっても面白いですよ!一緒に農家さんのお話を聞いてお互いに学べる機会を作れたらいいなと思います。

―ありがとうございました。


聞き手・構成・編集:茂出木美樹

ディレクション:鎌田千瑛美